2001年11月16日 第1刷発行
述者:中村 天風(てんぷう)
監修:公益財団法人 天風会
発行者:牟田 太陽
【述者紹介】
明治9年、東京王子村(現北区)生まれ。明治35年頃、参謀本部諜報部員として旧満州に派遣され、日露戦時下「人斬り天風」と恐れられるめざましい活躍をする。帰国後、奔馬性肺結核という死病にかかり、救いの道を求め欧米を巡るも回復せず。日本へ向かう途上、ヨガの聖者ガリアッパ師に奇遇、ヒマラヤのカンテェンジュンガに導かれ行修。日本初のヨガ直伝者となる。
帰国後、東京実業貯蔵銀行頭取、大日本製粉重役となるも、突如感ずるところあって、社会的地位、財産を放棄し、辻説法に転じる。その波乱の半生から得た人生成功の哲学は、触れるものをたちまち魅了。
東郷平八郎元帥、原敬氏、ロックフェラー三世、松下幸之助氏、倉田主税氏、浅野総一郎氏双葉山定次、広岡達朗氏、宇野千代氏・・・戦前戦後を通し、各階の頂点を極めた幾多の人々が「生涯の師」として心服した。昭和43年没後も、TDK相談役素野福次郎氏、京セラ名誉会長稲盛和夫氏など、天風門人となる者が後を絶たない。
著書「真人生の研究」「成功の実現」「盛大な人生」「心に成功の炎を」「いつまでも若々しく生きる」他。
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★★★★ |
お役立ち度 |
★★★★★ |
心にしみわたる度 |
★★★★★ |
「ごぶさたしております!」
新型ウイルスの猛威が収まってきたかと思いきや、ここにきて第二波が疑われるような連日の感染者増加報道。
なんとも慌ただしく、落ち着かない毎日ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
「毎週日曜日に更新」と銘打っていたのに、合計7週間も未更新となってしまい、申し訳ございませんでした。
その間、私は・・・・・・勉強しておりました!
ええ、もう。大変でした。
先週の土曜・日曜に1次試験を受験してきました。
現時点では自己採点ですが、結果はコチラに記載しております。
それでは、今週の1冊です。
松下幸之助先生や稲盛和夫先生が「生涯の師」と仰いでおられ、両者の著書にも度々お名前が上がる「中村天風」先生。
一度著書を拝読したいと思っており、この度、まずは入門書を読んでみました。
「自分の人生を、自分らしく、望み通りに生きる」
ために必要なことが、惜しみなく記述されていました。
この本は、天風先生が若者に講話した内容をまとめた本であるため、非常に分かりやすく簡潔に書かれており、読みやすく内容が充実しているという、大変な良書です。
ぜひぜひ、お読み頂きたい一冊です。
いつも通り、「例によって勉強になった3つをご紹介」といきたいところなのですが、あまりにタメになる話が多く、3つに絞りきれませんでした。
今回は合計6個になりますので、前編・後編に分けて記載して参ります。
まずは、天風先生の人物像をご紹介致します。
以下、本書からの引用です。
きょうは、せっかくお若い方々を前にしておりますから、私があなた方と同じ年頃の時のお話を、ちょっぴり申し上げたいと思います。
私は軍事探偵として軍隊で働いていたんですが、実はその当時、まだ日本にはいわゆるインターナショナルスパイというものを教育する機関は何もなかった。
軍事探偵の募集ですから、もちろん堂々と公には募集できません。だから縁故募集。秘密の上にも秘密であります。
そして、それを採用する際の試験官というものが、一人につき最低30人から50人つくんです。一人を試験するのにですよ。
で、試験科目っていうのはたった3つしかない。
第一が度胸。軍事探偵ですから、度胸がなければつとまりません。第二は武術、第三は注意力。
試験といってもね、武術道場の真ん中に仰向けに寝かされて、長さ3mばかりの丈の物干し竿もってきて、それで両方に陸軍大学の猛者が、重しのようにその竹竿を上から押すのであります。
それを喉の上に当てといて、「20数えるまで耐えろ」っていうひどい試験なんです。それを耐えきれる人間だけしか採用しないんです。たいてい、まいっちゃいます。まいれば喝を入れて復活させます。
そしてそれが終わると今度は、柔道の稽古着の帯をほどいて首へ引っ掛けられて背負われるんです。そして道場を一回り。むろん、たいてい落ちてしまいます。落ちると、担いでってくれるんです。その背負われ方でこいつはダメだとかイイとかってことが分かるんです。「どうにだってなれ」というような気持ちで背負われているやつは採用されるけども、苦しい、たまらない、はあはあっていってるやつは不採用。
採用されると訓練があるのだけど、いちばんつらかったのはね、鰹節一本を教官が持ってきて、「おい、今日から5日間、これ一本で校舎の天井に忍べ。天井裏へ入って、しょんべんも大便も音のしないようにそこで処理しろ」って言うの。鰹節一本で5日間ですよ?
とにかくこの演習、もうこれが一番つらかった。他のことはあんまりつらいと思わないけど、食い物を削られんのがそりゃもう、一番つらかったです・・・
(引用ここまで)
・・・・・・ヤバすぎません!?これ。
で、この後のことは述者紹介にも書いておりますが、
満州で「人斬り天風」として恐れられる
↓
戦後、死病に掛かって生死を彷徨う
↓
欧米で医療を学ぶも自身の病気を治せず、死を悟る
↓
日本で死のうと思い帰国の途上で、ヨガの聖者に会う
↓
ヨガを修め病気を克服し、帰国後は銀行の頭取や企業の重役となる
↓
突如、一切の地位を捨て、説法者として余生を送る
波乱万丈すぎーー!
いったい、何者なのでしょうか・・・
そんな氏の教えは、単純明快ではありますが、このような経歴に裏打ちされた言葉だからこそ、重く響くのだと思います。
さて、有意義で幸福な人生を生きるには、何をおいても、かにをおいても、一番先に必要なことを、天風先生は
「他人(ひと)に好かれる人間にならなければいけない」
と言っております。
なんでもないようなことのようで、これが、人生の一番の根本基礎とのこと。
このあとの講話で、このような逸話が紹介されています。
(ここから引用)
みなさんご存知の、あの有名な豊臣秀吉という人、あの通り異常な出世成功したのも、他人に好かれるという要素があったからなんです。
(中略)
ちょうどいいチャンスに主人の織田信長が死に、そしてライバルの柴田勝家が老いぼれて、おまけに目の上のコブになるだろうと思った明智光秀が敵に回ってこれを滅ぼすことができるというふうに、トントンびょうしに天下を取る段取りになるなんて、よほど運のいい人だったと、大抵の人は思っている。
なるほど、そういう方面からだけの観察ならば、ラッキーボーイだといえましょうけれども、そこまでになるまでの秀吉の一切を完全につくりあげたものは、秀吉自身、他人に好かれる要素があったからです。
(中略)
主人の織田信長という人は歴史で御存知の通り、戦には強かったが、わがまま勝手で非常な癇癪もち。その乱暴な主人に仕えた秀吉の「他人に好かれる要素」というものは、ありがたいものですね。ずいぶん大きな失敗もしたけれども、「アホウ」という信長の大喝だけで済んでしまう。
秀吉がどんどん出世するので、あるとき大番頭の柴田勝家が他の家来たちの思惑も考えて信長を諌めたところ、「俺はあいつが好きだ」と言って、信長はニッコリ笑ったと言います。理屈はないんですよ。
(引用ここまで)
そして、他人に好かれようと思ったら、自分が好き嫌いを言わないこと。
それから同時に、どんな場合があっても、思いやりを持って「もしも自分があの人ならば」という真心で親切に応接する。
それと、他人に迷惑を絶対にかけないこと。
さらに他人から受けた恩義は、どんなささいなことでも重大に考えて本当に心からの感謝で報いるようにすること。
そうして自分の心をおおらかにし、自分の人生を心の持ち方で作り変えていくようにすること。
天風先生は、このように話されて講話を締めくくっておられます。
このような単純明快で基礎基本となることを、自分自身がキッチリと出来ているか、この文章をタイプしながら自問自答しています。
今より更に、広い心と感謝の気持ちを持って、日々精進して参りたいものです。
〜 To Do 〜 |
他人から好かれるよう、感謝の気持ちを持ち続ける |
これは、天風先生が死病を患い、欧米での治療も断念し、死を覚悟した帰国の途上のお話です。
インドで奇遇したヨガの先生に、どうすれば病を治すことができるか尋ねたそうです。
すると、ヨガの師は以下のように答えたそうです。
(以下、一部抜粋)
「お前は肉体ばかり考えているが、心の態度を考えなければいけない。心をいついかなるときも、常に積極的にしろ」
「はあ、でも心を積極的にしろって言われても、どうもよくわかりません。」
「もっとやさしく言えば、生まれたての心にかえるこった。」
「無理なこと言っては困ります。生まれたての気持ちなんて忘れてしましました。」
「それは理屈だよ。心理は常に公平だ。人類はどんな悪人でも善人でも一列平等。この世に生まれたとき、その心は無色透明のピュアそのものだ。」
「はー。生まれたての赤ん坊の心がピュアだってことはわかりましたが、もっとわかりいいように説明してくれませんか。」
「それは、尊さと強さと正しさと清らかさを失わないことだ」
(抜粋ここまで)
かように、心の積極性とは「尊さ、強さ、正しさ、清らかさ」と説かれています。
そして、そのためには言葉に気をつける、と先生は説かれています。
「こまった」「弱った」「情けない」「悲しい」「腹が立つ」「助けてくれ」という消極的な言葉を絶対に口にしない。
言葉は、観念を通じてその言葉通りの影響が出てきてしまう。
「ああ、ありがたい」「ああ、嬉しい」「ああ、楽しい」という天国言葉を常に使い、心の積極性を高めるべきと、説明されています。
また、幸運や幸福は、自分で呼び寄せるもので、そのような幸運・幸福は、心が積極的な人が好きだということを理解するべきと説かれています。
松下幸之助氏や稲盛和夫氏、他にも沢山の本で同様のことが書かれております。
古来より、異口同音に積極的な言葉遣いが推奨されているのに、私を含め、なぜ凡人は消極的な言葉を発し続けるのでしょう。
まずは自分から、積極言葉を多用し、「尊く、強く、正しく、清らか」な心を取り戻そうと思います。
〜 To Do 〜 |
尊く、強く、正しく、清らかな心をもつ |
思い通りの人生を送るために、まず気づくべき心理について先生は説かれています。
「あなた方の思い方や考え方というものが、現在あるがごときあなた方にしている」
とのこと。
もっと言うと、この世の一切合切、天地自然のもの以外はすべて、人間の思考によって生み出されたものである、と。
太古から脈々と、人間が心に思うことや考えること、「ああなったらいいな、こうなったらいいな」ということが理想化されて、それが一つ一つ現実化されてきて、今のこの世の中が作り出されてきた、これを忘れてはいけない。
だから、
「自分が知って知らずに関わらず、蒔いたとおりに花が咲く」
そして、心で思うことにプラスして、観念の要素が加わると、より実現の力が増す、と書かれています。
これも、様々な本で書かれていることでもありますし、私自身や私の周りを見ても、得心の行く考え方です。
有言実行
なんて四字熟語を出すまでもなく、自分のなりたい姿を想像し、そこに向かって努力をすること、そして、言葉でもって公言し進むこと。
自分が思い通りの人生を送るなら、「念じて、言って、行動する」というシンプルな行動原理に即していけば良いのだと思います。
本書を通じて、改めて有用性を意識できました。
〜 To Do 〜 |
念じて、言って、行動する |
まずは、前編のまとめです。
現代の日本人にはちょっと想像できないくらい、波乱万丈の人生を送ってこられた天風先生ですが、その教えはシンプルで、すぐに真似ができます。
しかし、「シンプルであり続けること」は非常に困難です。
少しの油断から、消極的だったり、他人の悪口を言ったり、自分が失敗した時の言い訳を考えてみたり・・・といった、いつもの自分が出てきてしまいます。
きっと先人たちも、何度も何度も挑戦と挫折を繰り返しながら、自分の血肉にしていったのだと思います。
これからも同様の本を読み、同じような感想とToDoを書くことになるかもしれませんが、その度に気持を新たに、心を積極的にしていきたいと思います。
〜 To Do 〜 |
1.他人から好かれるよう、感謝の気持ちを持ち続ける。 |
2.尊く、強く、正しく、清らかな心をもつ。 |
3.念じて、言って、行動する。 |