2018年12月15日 第1刷発行
著者:渋沢 栄一
編者:実業之日本社
発行者:岩野 裕一
【著者紹介】
1840年(天保11年)、武蔵国(現在の埼玉県深谷市)の農家に生まれる。1863年(文久3年)、「尊皇攘夷」思想の影響を受け、従兄弟たちと高崎城乗っ取り、横浜焼き討ちを企てるが計画を中止し、京都へ出奔する。1864年(元治元年)、一橋慶喜に仕える。1867年(慶応3年)、将軍・徳川慶喜の実弟であり、のちの水戸藩主・徳川昭武に随行しパリ万国博覧会を見学するほか、欧州諸国の社会、経済・産業、政治、組織などに触れる。1868年(明治元年)、明治維新となり欧州から帰国。1869年(明治2年)、静岡に「商法会所」を設立。その後明治政府に招かれ大蔵省の一員として新しい国づくりに深く関わる。1873年(明治6年)、33歳で大蔵省を辞した後、一民間経済人として活動を開始する。そのスタートは「第一国立銀行」の総監役(後に頭取)であった。以後、第一国立銀行を拠点に、株式会社組織による企業の創設・育成に力を入れ、生涯に500もの企業に関わったといわれる。さらに約600の社会・公共事業への支援並びに民間外交に尽力した。1931年(昭和6年)、91歳にて生涯を閉じる。日本という国、社会、人材の育成に尽くした一生であった。
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★☆☆☆ |
お役立ち度 |
★★★☆☆ |
基本を振り返る良書度 |
★★★★★ |
「本当に、お世話になりました。」
春は出会いの季節ですが、別れの季節でもありますね。
新型ウイルスの緊急事態宣言もやっと解除され、私の会社でも、4月1日に予定されていた人事異動が先日発表されました。
このページはコラムやブログではないのですが、本ページの数少ない読者である同僚が栄転することになったので、この場を借りて祝福させて頂きます!
私が現在の部署に配属になってから、ずっと同じチームで仕事をしてきて、経験が乏しい私の知識面や業界の常識をずっと教えてくれた同僚で、本当に世話になりました。
このご時世で壮大な送別会は開けないのですが、何とかして祝福したいと、画策しておりますwww
転勤してからも、たまにはこのページに遊びにきて下さいね。
それでは、今週の1冊です。
次回の1万円札の人物というニュースで話題になった、渋沢栄一の著書です。
同人は昭和6年に没しており、その遺作である「青淵百話」という本の中から、約30話を厳選。
文体を平易な表現に直し、文庫本として発刊されたものです。
今の私が読んでも示唆に溢れる本ですが、学生や若手社会人にも通じる逸話が多く、文庫本で読み切り易い分量でもあり、是非多くの人に読んでもらいたい一冊です。
例によって、勉強になった話を3つ取り上げます。
「口は禍(わざわい)の元」と、昔からよく言われております。
軽率に口を開けば思わぬ禍を招くから、気をつけて口を開くべし、という戒めです。
同時に、「無言実行」というように、自分の考えや今後の決意などは、むやみに公言せず、ひたすらに行動で示していくべし、という美学もあります。
しかし、渋沢は、さらに「口は幸福も呼ぶ」ことを強調しています。
つまり、禍を恐れて過度に無口になる必要は無い、と説いています。
では、何を恐れる必要があるのか。
それは、「虚言である」と本書にはあります。
つまり、言葉はどんなに多くてもそれ自体は害がなく、「虚言」こそ諸悪の根源である、ということです。
禍を恐れてひたすらに口を噤んでしまえば、必要な時に必要な言葉を発せられず、意志が伝わりません。
軽口は感心しないが、無口もまた、珍重すべきものではない、何も言わなければ福を招くことはできない、と書かれています。
先々週ご紹介した「アホとは戦うな」にもありましたが、軽率なリアクションは、学生時代こそ面白がられ人気者になれるかもしれませんが、社会人としての言動としては慎みたいものです。
発言自体は禍福の直接の原因にはならず、一つ一つの発言・言動に、細心の注意を払って物事に接することが肝要ですね。
〜 To Do 〜 |
虚言を発せず、言動一つ一つに注意を払う。 |
著者紹介欄にも書きましたし、歴史上非常に有名な方なので皆さんご存知かと思いますが、渋沢栄一は500もの企業設立に関わった、「日本近代資本主義の父」であります。
その御仁が、起業にあたって考える4条件が紹介されています。
私自身、本業では新商品の開発などに携わることもあり、暗中模索で進めている状況で、非常に参考になった考え方です。
つまり、「数字、公益、潮流、人材」の柱が揃っているかを吟味すること。
この4つが十分満たされていれば、見込みがある事業としてみて差し支えない、ということだそうです。
以下、簡単ではありますが、解説を抜粋します。
【数字】
事業ができるできないの判断だけでは無く、その事業を続けた場合の、経営運用の見込みが十分たつかどうかを判断する。
ただ、「世間の需要がある」といった程度の予測ではなく、右から見ても左から見ても間違いが無いよう、精細綿密に計算できていれば、事業の骨組みは成立したといって良い。
【公益】
起業する個人のみが儲かる商売では、一時的には繁盛するものの、社会に見捨てられ、いずれは没落してしまう。
反対に、社会公益のためなら個人の利益は犠牲にしても良い、という起業は、成立しないために継続困難となってしまう。
それゆえ、事業という以上は、自分も利益を得ながら同時に国家社会の利益にもなることでなければいけない。
【潮流】
いかに収支が十分で公益があっても、時機が悪いと時代の潮流に圧倒されてしまう。
景気動向、他業動向を見定めた上で、立ち上げるべき事業を起こすべき。
【人材】
上記全てが揃ったところで、人材がいなければ事業は継続しない。
経営を任すべき能力のある人材がいなければ、経営は不可能である。
また、能力に任せて熱意のない人材も悪の根源となる。
熱意と能力を兼ね備えた人材を据えて、事業継続が可能となる。
以上、抜粋してみました。
起業を考える際には、非常に多岐にわたった分析が必要だとは思いますが、考えてばかりで行動しないと、それは机上の空論に終わってしまいます。
それゆえ、「絶対外せない4要件」にまとまっていると、注力すべき要素が明確になり、優先度が明確になります。
新商品検討の際にも、十分役立つ示唆ですので、しっかりマスターしたいと思います。
〜 To Do 〜 |
起業時は「数字・公益・潮流・人材」を見極める。 |
「仕事がつまらない」「仕事が無くて困る」という不平を、一度や二度は言ったことはあるのではないでしょうか?
私は、今はありがたいことに多忙な毎日を送っていますが、過去を振り返ってみると、仕事が少なく暇な時間を過ごしていたこともあります。
これを、他人や上司、あるいは環境のセイにして、暇であることをアピールしながら、仕事があれば回して欲しいということを言っていたことがあります。
「仕事を回してくれ、だなんて、エライですね」
などど言われて調子に乗っていましたが、本書のこの項目を読んで、非常に恥ずかしくなりました。
というもの、「才能がある者には、仕事は自然と集まってくる。仕事が無い等と吹聴して回るものは、自分の無能を吹聴していることと同義である」と。
確かに、自分が誰かに仕事を依頼する時は、どんな人に頼みたいでしょう?
①「こちらが管理監督しないと、進むものも進まない人間」
②「依頼すれば依頼通りの結果を返す人間」
③「期待以上のスピードで期待以上の成果を返す人間」
それぞれの職場に、様々な人がいると思います。
そして、他の要素が無く誰にでも依頼ができるなら、やはり③の人に依頼したくなるでしょう。
つまり、③の人は、常に多忙であるはずなのです。
暇な人は、「手が速く捌くことが上手」であるのかもしれませんが、それは一時的で、すぐに別の仕事が回ってくるはずです。
つまり、いつも暇であることを吹聴している人こそ、能力や人格の面で問題があり、仕事が廻ってこない原因が自分自身にある可能性が高いものです。
自分の置かれた環境に不満があるときは、不平を漏らす代わりに、持ち場での職務に精励し実力を付ける努力をすべきです。
それがやがては評判に繋がり、仕事の依頼に繋がり、評価や繁盛に繋がる、と思います。
足元の地道な努力を笑わず、脇を絞めて進んでいきたいものです。
〜 To Do 〜 |
今の業務に打ち込み、評判を上げる |
仕事の基本中の基本を含め、精神面について多く書いてある本でした。
今更感がありながら、やはり原点に立ち戻ることも大事だな、と感じました。
本書の別の項にも、「失敗は調子の良い時に起こる。ゆめゆめ油断せぬよう」との示唆もありました。
改めて自分の言葉でまとめて、自分のTo Doに入れると、基本を大事にしようという気持ちが湧いてきます。
明日から月も代わり、環境も少しずつ通常に戻り始めており、心機一転、頑張っていきます!
〜 To Do 〜 |
1.虚言を発せず、言動一つ一つに注意を払う。 |
2.起業には「数字・公益・潮流・人材」を見極める。 |
3.今の業務に打ち込み、評判を上げる。 |