『上司の哲学』

2001年11月15日 第1刷発行

 

著者:江口 克彦

 

発行所:PHP研究所

 

【著者紹介】

PHP研究所代表取締役副社長。

昭和15年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、松下電気に入社。その後PHP研究所。昭和51年より経営を任され、平成6年に現職に就任。松下幸之助晩年の22年間、つねにその側で仕事をし、薫陶をうけてきた。著作に『心はいつもここにある』『経営秘伝』『松翁論語』『地域主権論』『人徳経営のすすめ』『成功の法則』『部下の哲学』『人間大事の哲学』『王道の経営』(以上、PHP研究所)『成功する経営 失敗する経営』(PHPソフトウェア・グループ)『部下を育てる12の視点』(経済界)『幸せとはなにか』(大和出版) などがある。(著者紹介より抜粋)

 

【オススメ度】  
読みやすい度 ★★★★☆
お役立ち度

★★★☆☆

 松下幸之助のファンになる度

★★★★★


「・・・静寂。無音。ただ、自分の咀嚼音だけが聞こえる世界

 

と、これではさすがに言い過ぎですがw

 

最近の会社の食堂の様子です。

 

ウイルス感染防止のため、チーム全員で合わせて向かっていた昼食ルールが変更。

 

特定の時間に利用者が集中しないように、ビルのフロア毎に利用可能時間が決められ、各人は時間内に個別に昼食へ向かう。

 

席は一方向のみ利用可能で、向かい合う席は全て利用禁止。

 

つまり、全席がカウンター席のように、全員一方向を向き横並びになるような配置に変更。

 

配膳時も発言は極小化され、食事の際の私語も自粛。

 

結果、個々人が静寂の中、昼食を取ることになり、書き出しのような状況となっているわけです。

 

控えめに言って、かなり良いです!

 

満足感、半端ないです!!(笑)

 

もともと、周囲の人に気を遣いながら、食事のスピードも合わせて、「皆で頂きます、ごちそうさま」ということが苦手でした。

 

それは、食べるスピードが他人より早いこともありますし、共通の話題を探すこともタイヘンだったこともあります。

 

それが今は、一人でいって、好きなメニューを選んで、スマホ片手にサッと済ます。。。

 

何か、社会人失格な昼食ですね、スミマセン。

 

早く日常が戻ると良いですね。

 

 

 

 

それでは、今週の1冊です。

 

本日2度目の更新です!(苦笑)

 

自分が、先週サボっただけですが。。。

 

3月15日にも書きました、江口克彦氏の本です。

 

経営の神様、松下幸之助の最後の愛弟子として知られ、PHP研究所を長年支え、自身も多くの著作を残されている方です。

 

本書は文庫本として2001年に刊行されていますが、もともとは1997年12月に発刊されており、中々に古い書です。

 

しかしながら、本書で説かれている上司のり想像は、現代の日本でも十分に通用する、非常に重要な示唆が多く取り上げられています。

 

例によって、勉強になったポイントを3点書いて行きます。 

 


〜①:部下に手を合わせる〜

松下幸之助は生前、「部下に手を合わせることが出来る上司でないとダメだ」と話していたそうです。

 

部下の表面ばかり見るのではなく、部下の持って生まれた人間的能力、あるいはその人の人格そのものを見つめる力があるかどうかが問われるのだ、と。

 

表に出てきた実績を評価し、褒めることは簡単でも、これから発揮されるであろう能力を信じ、部下の存在そのものを受け入れることが大切だと、話していたそうです。

 

少し長くなりますが、この例示として、本書に紹介があった逸話を引用致します。

 

~人間の中に仏を見出す~

かつて建仁寺に、俊崖和尚(しゅんがいおしょう)という高名な学問僧がいた。

この俊崖和尚のところに、釈宗演(しゃくそうえん)という人が小僧として修業に入った。

ある日和尚が出かけることになり、帰ってくるまでに部屋の掃除をしておくようにと宗演に指示を出した。

ところが、あまりの陽だまりの気持ちよさに、この宗演という小坊主は掃除をしないまま寺の廊下で昼寝を始めてしまった。

それも和尚の部屋の出入りするところにゴロンと寝てしまったのである。

ウトウトといい気持ちであった。

しばらくしてミシミシと廊下を歩く音がする。

気がつけば、和尚が帰ってきてしまったのだ。

もうここで飛び起きるわけには行かず、そのまま身を固くしてじっとしていた。

和尚の足が宗演の前で止まった。

小坊主が和尚の言いつけを聞かないということは、これは大変なことなのである。

まして和尚の部屋の出入口あたりで昼寝をするなどどいうことは、もっての外だ。

宗演は覚悟を決めた。

「コラッ、掃除をさぼってこんなところで寝ているとは何事だ!」

と怒鳴られ、体を蹴飛ばされるに違いない。

それくらいの失敗をしてしまったのだから仕方がない。

そう思いながら、また身を固くしていた。

ところが和尚は蹴飛ばしはしなかった。

俊崖和尚は年端も行かない小坊主の体をまたぐ時、

 

「ごめんなされや」

 

と小さな声で言って自分の部屋に入って言ったのである。

これに宗演は感動した。

叱らなかったということではなく、「ごめんなされや」という一言に涙が出るほどに感動した。

この偉い和尚さんが、自分を一人の人間として認めてくれている。

それは人間として最高の喜びではないだろうか。

それから宗演は一念発起して、ものすごく勉強と修行に励んだ。

そして三十代という若さで、鎌倉円覚寺の館長にまでなったという。

(引用、ここまで)

 

これが褒めることの真髄と本書では説明されています。

 

褒める際のテクニック本が多数ある現代でも、まずは部下の心に仏を見出し、部下に手を合わせる。

 

それが出来て、初めて部下を褒められるというわけです。

 

私も今まで、コーチングの本などを読んできましたが、「部下の心に手を合わせる」などという教えは今まで一度も触れたことがありませんでした。

 

ですが、部下に感謝せずに、褒め方のテクニックだけをマスターしても、きっと部下にはバレてしまうでしょう。

 

まずは、一人の人間として、自分の下で働いてくれることに感謝するところから始めるべきですね。

 

 

〜 To Do 〜

部下の心の中の仏に感謝する


〜②:部下に詫びる度量を持つ〜

これも、本書から具体的エピソードを引用します。

 

かつてPHP研究所で教育に関するある提言を発表したことがある。

これからの日本のために、まず教育を見直さなければならない。

これからの日本を背負っていく子どもたちのために、教育制度を考え直すべきである。

そういう趣旨に基づいて、幅広い分野の専門家の方々に集まってもらい、松下幸之助をも含めて活発な意見交換をしたわけである。

その提言がようやくまとまり、いよいよ新聞に意見広告を発表しようという段になった。

すでに諸先生方の了承も取り、新聞に出す校正刷りもできている。

その時に私のところへ松下から電話が入った。

「君、あれ、やめとこう」

というのである。

「こういうものを出したら、都合の悪い人たちもでてくるかもしれへんからな」と。

私はすぐさま松下のところへ行き、こう言った。

「日頃からPHP研究所は世のため人のためとおっしゃているじゃないですか。

この教育提言が国のためになると思えばこそ、みんなで議論してきたんじゃないですか。

それなのに幾人かの人に都合が悪いかもしれないからといって、取り下げるなどということはおかしいと思います。

日頃からおっしゃていることと違います。」

それだけ言うと、私は松下の部屋を出た。

「これまでやってきたことは、なんだったのか」という思いが心の中を駆け巡っていた。

そういう思いで家に帰ると、間もなくして松下から電話があった。

さっきの話は、わしが悪かった。よく考えてみるまでもなく君の言うというりや。

わしが少し迷ったのが悪かった。

やるべきことはやろう、断固として。」

(引用、ここまで)

 

松下幸之助といえど、判断に迷ったり間違ったりすることはあるでしょう。

 

しかし、迷った挙げ句、「やはり止めよう」というのは、思いつきではなかったはずです。

 

その判断に対し、自分の部下から、真っ向から反対されたのですから、並の上司だったら、

 

「うるさい、そんなことは言われなくても分かっている。しかし、今回は冷静に判断し、やはり中止が良いと私が判断したのだ。」

 

などと言って、自分の意見を変えないでしょう。

 

むしろ、ますます頑なになってしまうかもしれません。

 

それを、「普段の言動と一致しないではないですか!?」という、かなり厳しい口調で正論を突かれた際に、

 

「自分が悪かった」

 

と部下に詫びれる度量が、理想の上司と言えるでしょう。

 

すぐにこんな仏のような境地には至れないとしても、目指そうという努力はして行きたいと思います。

 

 

〜 To Do 〜
部下に正論を突かれたら、素直に謝る度量を持つ。

〜③:情報を共有する~

 

 まず、今の私の話をします。

 

年齢をソコソコ重ね、役職も上がり始めたので、部内での立ち位置が少しずつ変化してきて、徐々に経営層に近い立場になり始めました。

 

すると、今までよりも情報が早く深く伝わってくることが多くなりました。

 

また、新商品の開発にも携わっているため、正式に決定されていなかったり、確定ではない新情報を持つことも増えてきました。

 

ただ、この新情報というのは中々厄介で、自分一人で持っていても活用し切れないものの、誰にどこまで開示していいものか、悩むものでもあります。

 

そんな中、情報についての提言を本書で見つけました。

 

「情報はいち早く共有する。」と。

 

(ここから引用)

「俺は今、こういう仕事をしている。

この仕事を是非成功させたい。

俺も自分の思っている情報を公開する。

だから俺に足りない情報を教えてくれないか。」

そんなふうに堂々と言えることこそが、真の仕事に対するプライドと愛情ではないだろうか。

(引用、ここまで)

 

自分自身、どこまで開示して良いのか迷う上に、開示情報で何かトラブルがあった場合の責任を考えると、つい情報開示に二の足を踏んでしまっていましたが、確かに、真の仕事のプライドのために、「情報が欲しい」と広く声をかけることは有用だと感じます。

 

自分が情報を独占していることの有効性はどんどん低くなってきているので、情報を活用出来る能力を向上させていきたいと思いました。

 

〜 To Do 〜
情報は広く開示し有効活用する

〜まとめ〜

1日2記事アップは、中々シンドかったです。

 

ほとんど引用の感想文になってしまい、自分の中で咀嚼しきれていないことが露呈してしまいましたね。

 

来週以降も、試験勉強と読書の生活は続いていくので、ここらで気合を入れ直して、来週はもう少し良い感想文を書こうと思います。

 

〜 To Do 〜
1.部下の心の中の仏に感謝する。

2.部下に正論を突かれたら、素直に謝る度量を持つ。

3.情報は広く開示し有効活用する。