2019年12月21日 第1刷発行
著者:鈴木 祐
発行者:小早川 幸一郎
発行所:株式会社クロスメディア・パブリッシング
【著者紹介】
新進気鋭のサイエンスライター。1976年生まれ、慶応義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手掛ける。近年では、自身のブログ「パレオな男」で審理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。また、ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。
著書に『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)『ヤバイ集中力』(SBクリエイティブ)他多数
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★☆☆☆ |
お役立ち度 | ★★☆☆☆ |
今の会社が当っているか不安になる度 | ★★★★☆ |
今日から3月ですね。
世間では新型ウイルスが蔓延し、急な休校やイベント自粛等、様々な場面で影響が出ていますね。
我々も、明日からは時差出勤です。
我が家では、タブレットを使用した通信教育をさせており、休校中も自主学習ができる環境でラッキーでした。
今週はみんなでディズニーランドに行こうと言っていたので、子供たちは大変がっかりしていますが、大人は楽が出来てホッとしています。
マスクは相変わらず購入できませんが、細かな予防で自己防衛していきたいものです。
では、今週の一冊です。
12月1日(日)、ヤバい集中力 12月29日(日)、パレオ式ダイエットの教科書、に続く第三弾
鈴木祐氏の「科学的な適職」です。
著書略歴にも記載されていますが、10万本を超える科学論文や600人を超える海外有識者へのインタビューを基に、科学的な見地からテーマの分析を得意とする著者です。
今回は「適職」ということで、特に転職希望者にオススメです。
私は転職願望はありませんが、現在の仕事に対するスタンスを見つめなおす良い機会になりました。
これから適職を探す方は、是非本書を手に取って精読して頂きたいと思います。
このページでは、巷で良く聞く「適職に対する考え方」がいかに間違っているかを分析した「7つの大罪」についてご紹介致します。
仕事選びにおける7つの大罪は以下の通りです。
1.好きを仕事にする
2.給料の多さで選ぶ
3.業界や業種で選ぶ
4.仕事の楽さで選ぶ
5.性格テストで選ぶ
6.直感で選ぶ
7.適性に合った仕事を求める
どれも正しいことを言っていると思いますよね?
本書で説明されていることを、かいつまんで記載します。
多くの職業研究によれば、自分の好きなことを仕事にしているか否かは、最終的な幸福感に違いがないそうです。
例えば、仕事を「適合派」と「成長派」のパターンに分類して個人の幸福への影響を調べた2015年のミシガン州立大学の研究は以下の通りでした。
適合派:好きなことを仕事に出来れば、給料は安くても満足できる仕事が出来て幸せだ。
成長派:仕事は続けるうちに好きになる。仕事は楽しくなくても良いが、給料は欲しい。
仕事を始めた頃は適合派の幸福度が高いそうですが、1年〜5年のスパンで見ると、成長派の方が幸福度・年収・キャリアが高かったそうです。
また、オックスフォード大学が行った別の研究では、好きを仕事にした人ほど長続きしないとの結論が出たそうです。
好きを仕事に派:自分はこの仕事が大好きだ!と感じて仕事をするタイプ。
情熱派:この仕事で社会に貢献するのだと感じて仕事をするタイプ。
割り切り派:仕事は仕事と割り切って、日々の業務に取り組むタイプ。
スキル向上と仕事の継続率が最も高かったのは、割り切り派だったそうです。
どちらも、「好きを仕事に」とやっていても、実際には嫌いな仕事や作業がついてまわるため、それだけがモチベーションだと「本当にこの仕事が向いているのか?」と、壁にぶつかった際に疑問をもってしまうとのこと。
好きを仕事にするのではなく、今の仕事に真摯に取り組んで行くと、徐々に好きになっていく。
そもそも、順番が逆、ということだそうです。
本項にも多くの研究結果が引用されていますので、興味がありましたら是非本書をお読み頂きたいです。
結論は以下の通りです。
・給料のUPは、1年程度で慣れてしまい幸福度UPに繋がらない。
・仲の良いパートナーとの結婚や、健康レベルの改善と比較した場合、年収UPの満足度はゼロに近い。
・給料水準が年収500万円以上になると、そこから更に年収が上昇しても満足度は少ししか上がらない。
ということで、年収だけを基準に他が犠牲になる仕事だと、むしろ満足度が悪くなってしまうということが研究から分かっているそうです。
本項の結論はシンプルで、以下の通りです。
①専門家だろうが、有望な業界など予測できない
②人間は、自分の個人的な興味の変化も予測できない
つまり、「これからはAIだ」「フィンテックが熱い!」などと業界・業種で縛ると、その業界の変化と個人の興味の変化という2つの変数によって、情熱が長続きしないということが知られています。
仕事って、大変ですよね。
できれば、楽して稼ぎたいですよね。
ただ、楽すぎる仕事は死亡率を2倍に高めるという研究結果が出ているそうです。
過度なストレスが健康や満足度に大敵であることは広く知られていますが、一方で、ストレスが全くない状態だと、仕事の満足度は低下し、離職率が増加した研究結果もあるそうです。
適度なストレスは仕事の満足度を高めてくれます。
「人に何かリクエストすることは苦手ですか?」
「物事は完璧にしたいタイプですか?」
転職・就職サイトではこのような質問をよく見かけますね。
これは、エニアグラムという理論に基づく性格診断の一種だそうです。
詳細は本書に書かれていますが、残念ながらこの診断は適職探しには向かないそうです。
最終的には9タイプに分かれるそうですが、例えば「タイプ6:信頼を求める人」は安全を求める、「タイプ9:平和を好む人」は安定を好む、と定義されているそうです。
安全も安定もほぼ同じ概念です。
この診断は、「診断するテーマ」と「出てきたタイプ」をどのように関連つけて説得力ある結論を導くかが腕のみせどころだそうです。
詳しい方なら分かるかもしれませんが、これって、タロット占いとあまり違いがありませんよね。
人間の直感は、かなり精度よく働くことが知られています。
しかし、適職選びには向かないと言われています。
というのも、直感が正しく働くためには、以下の3点が必要だと言われているからです。
①ルールが厳格に決まっている
②何度も練習するチャンスがある
③フィードバックがすぐ得られる
例えば、チェスや将棋の「早指し」は3つの項目を満たしており、熟考した通常の指し方と遜色ない結果が出ることがあるそうです。
しかし、適職探しは、真逆を行っています。
①転職の統一ルールは無い
②何度も練習するチャンスが無い
③結果のフィードバックは、転職して数か月から数年しないと分からない
ゆえに、直感が正常に働きにくい分野であると言えます。
個人の適性や強みに沿った仕事に就けると、個人の満足が上がり、組織としてもパフォーマンスが良くWin-Winになれると思われます。
ただ、これには、3つの問題点があると指摘されています。
①適正を正しく把握することが困難
②その適正にマッチした仕事があるとは限らない
③強みを活かした職でも、周囲の同僚が同じかそれ以上の強みを持っていると、効果が少ない
特に③は的を射た指摘だと感じます。
「ミスが少ない人材」で事務職に配置されたとしても、全員がミスが無ければ、それは強みでも個性でも無くなります。
であれば、「向上心がある」「現状の課題の指摘と解決策の立案に積極的」「職場の雰囲気を明るくするキャラクター」とかの方が、強みとしてクローズアップされることになります。
適正把握⇒強みがマッチする職場 と、単純にはいかないわけです。
冒頭にも書きましたが、転職を考えている方は、是非本書を購入し精読することをオススメします。
私も、仮に転職や副業を考えるようになった際には、再読しようと思います。
ただ、今は現在の仕事と資格取得が最優先なので、「適職探し」はしませんので、ここから先の本書の内容は現時点では不要でした。
しかしながら、現在従事している仕事に対しても、様々な示唆を得ることができました。
・最初から「好き」を仕事にするより、今の仕事を好きになった方がよい。
・給料の伸びより、健康・家族の充実の方が幸福度が高まる。
・業界や個人の興味の変遷を考えると、業種に拘る必要性は高くない。
・適度なストレスは職務充実に繋がる
・自分の性格や適性が仕事に合っているかは、気にしすぎることは無い。
今月は期末月でもあり、様々なストレスに晒されると思いますが、負けずに頑張ろうと思います。