2011年8月16日 第1刷発行
著者:桑原 晃弥
発行者:佐藤 和夫
発行所:株式会社あさ出版
【著者紹介】
経済・経営ジャーナリスト。広島県生まれ。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経てフリージャーナリストとして独立。転職者・新卒者の採用と定義に関する業務で実績を残した後、トヨタ式の実践、普及で有名なカルマン株式会社の顧問として「人を真ん中においたモンづくり」に関する書籍やテキスト、ビデオなどの企画・編集を行っている。主な著書に『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP文庫)『1分間スティーブ・ジョブズ』(ソフトバンククリエイティブ)『グーグル10の黄金律』(PHP新書)『ウォーレン・バフェット賢者の教え』(経済界新書)などがある。(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★★★☆ |
お役立ち度 | ★★★☆☆ |
バカと天才は紙一重度 | ★★★★★ |
先週は、めちゃくちゃ寒かったですね。
世の中では、新型ウイルスが猛威を振るい、未だに特効薬が開発されていない状況です。
こんな中、かの「ジャッキー・チェン」が、新型ウイルスへの特効薬を開発した人や団体には、私財で1000万円を寄付することを宣言しました。
賛否あるようですが、一定の支持は得ているようですね。
また、新型ウイルス防止のためマスクの品切れが続いていますが、その予防に合わせて、インフルエンザの患者数も昨年対比で激減しているそうです。
やはり、小まめな予防が大切なのだなぁと、改めて考えさせられます。
では、今週の一冊です。
タイトルに惹かれてまとめ買いした中の一冊です。
最近読んだ順番が、『バカの壁』⇒『アホの壁』⇒『スティーブ・ジョブズ』でした。
何ら意図したことではなかったのですが、アホとジョブズの紙一重さには正直驚きました。
ジョブズ関連の書籍は初めて読んだのですが、正直、私のような凡人では絶対ついていけないと思いました。
少なくとも、自分の上司にはなって欲しくない(笑)
ジョブズの鬼才っぷり、奇行のご紹介は別書に譲るとして、自分でも参考にできそうな項目を3つご紹介致します。
「前を向く」だけでは、マンネリ脱出は難しい。
ポイントは「過去を絶つ」ことだ。
本書では、まずこのように書かれています。
ジョブズの生み出す製品は、過去の延長線上にない製品であり、それが世界に驚きを与えます。
ジョブズの好敵手であるビル・ゲイツは、実は真逆です。
1985年にウィンドウズOSを発表して以来、コツコツ改良しながらもう30年は経ちます。
一方、ジョブズは従来製品を全否定する製品を作ることがあります。
ウォズニアックが作り、ジョブズがプロデュースしたアップルⅡは、業界で最も成功した製品になりました。
普通なら、これを改良しながら売って、獲得したユーザーと共に製品を育てて行くと思います。
しかし、次に彼がヒットさせたPC「マッキントッシュ」は、アップルⅡと何の互換性も持っていなかったのです。
アップルⅡのソフトウェアも使えず、周辺機器も接続できないありさまでした。
アップルⅡからマックに買い替えるユーザーからすれば、全部をゼロから買いそろえることになります。
当然、アップル社内でも大変な反対があったそうですが、ジョブズはこう言って強行したそうです。
「ときにはこれまで築いてきたものを断ち切ることが必要であり、われわれはそこから世界を再構築しなければならない」と。
全く意味が分かりませんねw
しかし、この常識破りな発想がなければ、マッキントッシュも、iMac・iPod・iPhon・iPadといった数々の名機も生まれなかったでしょう。
積み重ねるより断ち切ることの方がリスクが高いですが、時にはゼロから再構築することで、道が開けることもあるという好例です。
弱い立場なら武器は熱意しかない。
とにかく熱く押すことだ。
しかし、こんな戦略では、当然簡単には勝てない。
負けを覚悟で押し相撲をするのは、経験と実績を積んで将来に備えるためだと思おう。
本書では、まずこのように説明されています。
ジョブズが特筆すべきなのは、絶対に成功させたい交渉は必ず、「最初から最後まで自分でやること」だったようです。
例えば、iTunes Music Storeを開く時の話が紹介されています。
iPodを大ヒットさせた要因は、アップルストアの充実が挙げられます。
ただ、このストアには音楽業界の協力をとりつけなければいけませんでした。
欲しい音楽がろくにそろわない二流・三流のストアなど意味が無いからです。
つまり、「ユニバーサル・ワーナー・EMI・BMG・ソニー」の5大レーベルが全て揃わなければ意味が無いということです。
当時、これは誰もが不可能だと思ったそうです。
「レーベルは互いに利害が複雑に絡み合っている。」
「非合法ダウンロードの問題はどうする」
「ジョブズは業界に人脈がない」
など、難しい理由は枚挙にいとまがありません。
そこで、ジョブズは全ての会社との交渉を、最初から最後まで自分で行ったそうです。
口説き文句は「インターネットは音楽を運ぶために生まれてきたんだよ。」
そして、ユーザーが音楽を「盗む」のではなく、ネットを通じて音楽を「買ってもらう」仕組みを構築することを熱弁し、全レーベルのトップを口説き落としたそうです。
この交渉でモノを言ったのが、ジョブズの名声だったそうです。
つまり、アップル創業者としてPC革命をもたらした後、アップルから追放され「全米で最も有名な失業者」になりながら、ピクサーを買収。CGアニメーションという新分野を開拓し再び巨万の富を得た実業家。
このような名声のある人物が直接交渉にくるので、各社とも責任のある立場の人間を出さざるを得なくなったということです。
自分自身に翻って考えると、現時点で名声や権力を得ているわけではありませんが、どんな苦しい交渉や失敗も、経験と実績に繋がると信じ、自分自身で逃げずに対峙していくことが、まず重要なのだと思いました。
安全は一番危険な落とし穴。
成長期の課題が「自分」の発見だとしたら、成熟期の課題は「夢」の発見だろう。
ジョブズは、2000年に発売されたiPodを「記念碑的な製品になるだろう」と評しました。
そして、2003年のクリスマスシーズンに73万台、翌年のクリスマスシーズンに450万台という売れ行きでした。
普通の経営者なら、これだけの成功を収めれば安堵するところです。
しかし、ジョブズはこう一喝したそうです。
「普通の人なら、実に最高じゃないか。ここで失敗したら失うものも大きいのだから、あとは安全にやろう、と思うかもしれない。だが、これは僕らにとって一番危険な落とし穴なんだ。僕らはもっと大胆にチャレンジし続けなきゃいけない。」
そして、最も成功しているiPodミニの販売をやめ、さらにすぐれたものを作るという驚愕の構想を打ち出しました。
百歩譲って、モデルチェンジをするなら理解できる。
ただ、売れている商品の販売を辞めるとは、狂気の沙汰です。
なぜか。
これは、後戻りできない状況に自分たちを追い込むために行ったそうです。
そして、iPodナノの製造に取り掛かりました。
生産計画は、過去最高の450万台を大きく上回る1,500万台としました。
そして、実際に2005年の10月に1,500万台の販売に成功しました。
過去の夢を忘れて、さらにすごい成果を得たということです。
ジョブズは、ウォルト・ディズニーの「われわれの真価は次回作で決まる」という格言が好きだそうです。
成功は心地よいものですが、一方でそれは忘れ去るべきものと言っています。
何故なら、同じやり方で二度・三度成功することは難しいからです。
前例踏襲型大企業に所属している自分としては、非常に真似がしにくい考え方ですが、①世界にはこういう考え方で戦っている企業あるということを学ぶ、②自身の生き方として、過去の成功にのみ囚われすぎないように生きる、という2点から、しっかり覚えておきたいと思います。