2010年2月20日 第1刷発行
著者:筒井 康隆
発行者:佐藤 隆信
発行所:株式会社新潮社
【著者紹介】
1934年大阪市生まれ。作家、俳優。同志社大学文学部卒。江戸川乱歩に認められ、創作活動に入る。「虚人たち」「夢の木坂分岐点」「ヨッパ谷への降下」「朝のガスパール」「わたしのグランパ」など著作多数。
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★☆☆☆ |
お役立ち度 | ★☆☆☆☆ |
もう一度読みたい度 | ★☆☆☆☆ |
令和2年も1ヶ月が過ぎましたね。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
私は、なんだかバタバタと色々な事が起こった1ヶ月でした。
今年も充実した1年になるのだろうな・・・という予感がします。
今年こそ、診断士試験突破を目指して、本格始動致します!!
では、今週の一冊です。
先週の「バカの壁」と同時購入しました。
「アホの壁」
作者は違います。
出版社と発行者は同一です。
書かれた時期も、7年も異なります。
読む前は、同一作者による続編だと思っていましたが、全然違いました。
私のような凡人には、本書の方が読みやすかったです。
ただ、バカの壁と同様に、結局何か学びがあったわけではないので、「1度読んだことがある」という経験だけがプラスかな、という感じです。
やや乱暴に本書をまとめると、著者が知ったり聞いたり体験したりしたアホな体験を並べて、その原因を心理学・脳科学・歴史学に求めて散文的に書き進めたものです。
例えば、【「絶対に失敗できない舞台でのセリフ間違い」を、絶対にやってはいけないタイミングで間違ってしまうアホは、 は、実は深層心理では間違うことを望んでいるものだ。】
などど書かれています。
興味のある方は本書をご一読頂きたいのですが、個人的には、「どうでもいーよ。」って感じでした。
ただ、「ビジネスにおけるアホ」に近い章があったので、項目を列挙しつつ、気になった項目だけ少しご紹介致します。
ビジネスの三大構成要素の代表的モデルに「ヒト・モノ・カネ」モデルがあります。
このうち、「ヒト」に焦点を当てて、新しいビジネスを始める際に陥る悪パターンが、前述の項目立てから学ぶことができます。
すなわち、
1.親戚友人を仲間にするアホ
3.成功の夢に酔うアホ
4.よいところだけを数え上げるアホ
上記3点が揃うと、確実に失敗するでしょう。
1.親戚友人を仲間にするアホ
⇒自分の影響力が届きやすい範囲の知人の中から、
「数学がよくできる人だから経理」
「社交的で明るい人柄だから営業」
「寡黙で真面目な人だから総務」
こんな調子で、その道のプロでもない集団で新ビジネスを始めても、うまくいきません。
3.成功の夢に酔うアホ
脳内物質のドーパミンは、人間に快の感情を与えます。
自分が成功した夢に酔っている状態は、ドーパミンが作用し続けている状態であり、冷静な判断が下せなくなっています。
良識のあるものなら、自分の計画をいったん冷静に、客観的にみて、計画の推敲を重ねるものです。
しかし、成功に酔った状態だと無謀な計画でも「素晴らしいモノ」に思えて、そのまま猪突猛進してしまいます。
4.よいところだけを数え上げるアホ
3の状態より少しマシになったものでも、冷静になり切っていない者は、よいところしか見ません。
「自分の経験は他人に無いレアなものだ」
「共同経営者のAは営業力が強い」
「親戚ばかりで構成しており、繋がりが強い」
強みやメリットのみを捉えて行動することは、新しいことを進める原動力として大切です。
しかし、良いところ「だけ」を見て行動することは、一種の逃避であり自傷行為ですらあります。
本書にも失敗例が書き連なっており、「そんなアホな失敗する人いるかな?」と思いますが、筆者
多くのアホな失敗を見たと書いてあります。
次は「モノ」=ビジネスモデルについて考えてみます。
6.自分の価値観にだけ頼るアホ
7.成功した事業を真似るアホ
8・専門外のことを計画するアホ
このあたりが参考になります。
6.自分の価値観にだけ頼るアホ
例えば、原理主義や極端な思想への傾重倒錯のような状態は、視野狭窄に陥りやすくなります。
他人の考え方に想いが至らなくなり、少ない根拠で「これは必ず売れる!」などと、根拠のない自信のまま新ビジネスを進めていくことになります。
そして、大事な資金や時間を無為に投じてしまい、成功から段々と離れていくことになります。
7.成功した事業を真似るアホ
これは、成功したビジネスの裏側には、他人には簡単に真似ができない「ポイント」「コツ」「本質的強み」がバックボーンになっていることが往々にしてあります。
そうでなければ、本当の成功には至りません。
しかし、他人のビジネスの表面を捉え、簡単にマネが出来るものと思い、失敗する事業家が後を絶たないと書かれています。
また、本書には「国家の品格」というベストセラーの後、「品格もの」の大量発生が紹介されています。
「離婚の品格」「男の品格」「教師の品格」などなど・・・4年間で百冊超を数えたとのこと。
如何に他人の成功を簡単に真似られると考えている人が多いかを垣間見る事例と紹介されています。
8・専門外のことを計画するアホ
上記から繋がることですが、ある事業に特化していない専門外の者ほど、表面的に真似が簡単であると考えがちです。
そして、先に紹介したように「親戚友人を仲間にするアホ」のように専門的な人物がいない場合、素人集団でとにかくやってみることになります。
考え無しに行動することが重要になる場面ももちろんあるでしょうか、新ビジネスを計画する段階でこんな調子だと、「計画無し」の無謀な挑戦にしかなりえません。
ここまで、本書では1冊丸々使ってアホな事例や考え方を披露してきており、一読者としては辟易した気分にさせられました。
そこまで書いておいて、最終章が「アホの存在理由について」と題し、最後の最後にアホを持ち上げております。
「なんて節操のない本だ」と感じつつ、多分に共感する点が多く、抜粋しながら引用致します。
(以下、一部引用)
アホは良識ある人たちの反面教師、などという以前に、アホは社会の潤滑油ではないのか、時にはアホが世界を進歩させることだってあるのではないかと思い始めた。
整然と進行する世界にあって、時には飛躍も必要だろう。そういう時にこそアホなことを言う人間の存在がものを言うのではないだろうか。
言ってはいけないことを言うアホが社会の暗部を照らし、人々に現実を認識させることもあろうではないか。
アホが起こす笑いからは柔らかなユーモアも生まれるが、発狂するほどの強烈な笑い、腹がよじれ、末梢神経に作用して全身が震えるほどの笑いを呼び起こすこともある。それほどのエネルギーの発生が無価値であるはずはないだろう。
アホはまた、ガス抜きにもなる。良識ある人とてアホなことはする。いや、良識ある人こそたまにはアホなことをしなければならない。無意識の願望を発散させる機会に恵まれなければ、その人の欲求不満は蓄積し、ついには精神を病んで極端なアホをしでかしてしまうだろう。
人類はやがて滅亡するだろうが、そしてそれは最終戦争以外の理由であるからかもしれないが、その時初めて我々はアホの存在理由に気づくだろう。アホがいてこそ人類の歴史は素晴らしかった、そして面白かったと。アホがいなければ人類の世界と歴史はまるで無味乾燥だったに違いない。アホは何て素晴らしいものだろう。
アホ万歳。
(引用終わり)
と。。。
とんでもない大逆転手のひら返し!
1冊読んだ時間を返してくれ!
と思いつつ、最後になんだかホッコリした分、バカの壁より読んだ後の嫌悪感は少なかったです。
いずれにせよ、2冊ともあまりオススメはできません。
ヒマな時にでもどうぞ。