『妻のトリセツ』

2018年10月18日 第1刷発行

 

著者:黒川 伊保子

 

発行者:渡瀬 昌彦

 

発行所:株式会社講談社

 

【著者紹介】

1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI開発に携わり、脳と言葉の研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、世界初といわれた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した完成分析の第一人者。近著に「前向きに生きるなんてばかばかしい 脳科学で心のコリをほぐす本(マガジンハウス)」、「女の機嫌の直し方(集英社インターナショナル)」など多数。

(著者紹介より抜粋)

 

【オススメ度】  
読みやすい度 ★★★★★
お役立ち度 ★★★★
新婚時に知りたかった度 ★★★★★

長い正月休みから一転、人によってはガッツリ5営業日勤務した方も多かったのではないでしょうか?

 

いつも以上に長い1週間に感じたかもしれません。

 

その後の3連休、サイコーですね。

 

ゆっくり休んで、英気を養いましょう。

 

ちなみに、11日(土)は鏡開きでしたね。

 

みなさま、お餅は食べましたか?

 

正月は体重が増えて大変ですね。

では、今週の一冊です。

 

今週も、ビジネス書ではなく、実用書からです。

 

ビジネスも大事ですけど、家庭も大事ですよね。

 

とある週末に家族でイオンに買い物に来て、待ち時間にフと目に付いた1冊です。

 

今まで、経験則的に知っていた「男女の考え方の差」が、脳科学的に説明・解説されており、非常に納得感が高いと感じた1冊です。

 

具体的なアドバイスも豊富にあり、奥さんとの関係に悩んでいる方も上手くいっている方も、様々な気づきや学びがあると思います。

 

・・・あと10年早くこの本に出合えていれば、昔あんなにケンカしなかったのかなぁ。。。とも思います(苦笑) 

 


〜女性脳の特徴〜

突然ですが、みなさんは「妻が怖い」と思っていますか?

 

「怖い」は大げさだとしても、「何考えているか、イマイチ分からない」とか、「機嫌を悪くすると手が付けられない」等とは感じていませんか?

 

しかも、妻の怒りの理由を聞き出せないし、仮に聞けたとしても、解決策を提案したところで機嫌が直らない・・・(泣)

 

こんな経験を、一度はされたことはありませんか?

 

これは、妻の望む夫の対応と、夫が提案する解決策が根本からズレているから、と筆者は説明しています。

 

そもそもの妻の怒りの理由は、「今、目の前で起きたこと」だけではなく、過去の関連記憶の総決算として起こるものだそうです。

 

女性は、感情に伴う記憶を長期にわたって保存し、しかも「みずみずしく取り出す」ことが得意な脳の持ち主だそうです。

 

「感情によって連鎖される記憶」なので、感情のトリガー(ネガティブであれ、ポジティブであれ)がひとたび引かれると、関連する記憶がその感情をフックに、何十年前のモノを含めて、一気によみがえるのだそうです。

 

つまり、夫が無神経な発言をしたら、「無神経」という見出しがついた過去の発言の数々が、生々しい臨場感を伴って脳裏に蘇ることになります。

 

だから、「つわりがひどくてふらふらだった私に、あなた何て言ったか覚えてる?」と訴えられる、その時のおなかの子供はすでに30代、なんてことはざらにあるようです。

 

男性脳から考えると、全く理解が出来ません。

 

ですが、自分の経験から考えて、この説明は非常に納得できます。

 

何か「地雷」を踏んでしまった時の妻のリアクションは、よくもまぁそんな昔のそんな些細な事まで良く覚えてるよな・・・ってくらいの思い出が、急に展開されます。

 

自分の脳では同じことが出来ないので、理解は難しいですが、まずは「そういうものだ」と知ることが第一歩かと思います。


〜他人の体験談を自分の知恵に変える〜

女性同士の会話で、自分が長く理解できなかったことが、「具体的なオチも学習もない、些細な日常の話」が続くことです。

 

本書での例示では、「駅の階段でつまずいて転びそうになったの!」と言い出すと、「え〜怖い!先の細いパンプスだと、引っかかるよね〜」「わかる〜、あぶないよね〜」等と口々に言い交わす。そのうち、なんの脈絡もなく、別の話題に移っている・・・。

 

問題解決が主目的の男性脳では、全く意味が分かりません。

 

「階段につまずいて、転んで怪我をした話」ならまだ分かります。

 

しかし「つまずいて、転ばなかった話」をする意味が、理解できません。

 

「じゃあ、そんなヒールが高い靴なんて、履くのをやめるべきでは無いか?」などど、アドバイスの一つでもしたくなります。

 

しかし、女性脳には、こんな会話が大きな意味を持つと言います。

 

女性脳の特性の一つに、「共感欲求が非常に高い」があるそうです。

 

「わかる、わかる」と共感してもらえることで、怖かった・悲しかった・痛かった・寂しかった・惨めだった・・・といった神経回路のストレスが軽減されるのだそうです。

 

逆に、共感が得られないと一気にテンションが下がり、免疫力まで下がってしまうそうです。

 

また、他人の体験談であっても、共感して感情の見出しがつくと、前述の「感情をフックにした芋ずる式記憶整理」ができるそうです。

 

それゆえ、「駅で転びそうになった話」の感情に共感することで、自分が同じように先の細いパンプスを履いているときは、無意識のうちに手すりの近くに行くというような、危機回避に繋がるというわけです。

 

であるので、意味のない井戸端会議的おしゃべりも、「自分の身に起こった、ささやかな体験」を「知のプレゼント」として交換しあい、共感し合うことで「とっさに使える知恵」に変えて脳にしまい込む、非常に知的な交流会という側面があるそうです。

 

であるなら、我々世の男性はどうすれば良いのでしょうか?

 

相手の特性と背景さえ分かれば、対応はシンプルです。

 

①妻の話す些細な日常の一コマの話題には、オチも意味も見出さず、「感情に共感する」

 =「そうだったんだ、大変だったね。わかるわかる。」ここまでしか言わない。解決策は言わない。

 

②自分の日常で起こった話も、いくつか紹介する。これもオチ無しでOK。ただ共有する。

 

それだけで、知のプレゼント交換会に参加することになる、ということですね。

 

ちなみに、実践してみると、相当効果がありますよ。

 

まずは、「今日会社でこんなことがあってさ〜」って言ってみて下さい。

 

一通り話を聞いてもらった後で、奥さんからも何か話題があると思います。

 

全然面白くない話だと思いますけど、「そうだったんだ〜、わかるわ〜」と言ってるだけで、機嫌が良くなりますよ。

 


〜買い物の時間が合わない問題〜

世のカップルは、どうしているのだろう?

 

若いころ、ずっと疑問に思っていました。

 

買い物デートの話です。

 

例えば、僕は、「ペアウォッチを買いに行く」と決めて出かけるとします。

 

相手も、「そうだね」と共感してくれて、一緒に選ぶと約束して出かけます。

 

で、待ち合わせをして商店街に行くと、僕はまっすぐ時計屋に行きたいのです。

 

でも、彼女は道すがら「あれが可愛い」だの「これが素敵」だの言って、雑貨屋や服屋にフラフラ寄ります。

 

程なくして、目的の時計屋にたどり着きます。

 

僕は、機能や価格を比べながら、いくつもの候補から「あーでもない、こーでもない」と比較検討を繰り返します。

 

一方、彼女の方は、売り場をぐるっと見渡すと、「これかこれが良い!」と目星をつけて、それ以上は時計に興味を示しません。でも、どちらでも満足なようです。

 

これも、脳科学的に説明がつくようです。

 

男性脳は、横一列に候補を並べて、比較検討を実施して候補をしぼります。

 

対して、女性脳は、感じる領域の右脳と潜在意識の左脳の連携が良く、両方の脳を使用して一気に結論を出します。

 

男性脳からすれば、「直感的に」判断しているごときスピードです。

 

しかし、この能力をフル活用するには、両脳の電気信号を活性化しておく必要があります。

 

つまり、目的の品を品定めする前の道すがら様々な物を見て感想を言っていたのは、脳のウォーミングアップだったのです。

 

これだけの違いがあるのだから、同じペースで買い物をしても、お互いにストレスが掛かります。

 

であるなら、大きな買い物を2人でするためには、「一緒に行かない」という手段が考えられます。

 

つまり、夫は一目散に目的の店にいき、値段やら機能やら保証期間やらメーカーやら何やらかんやら・・・気が済むまで様々な切り口から比較検討を進めておきます。

 

一方、妻は、同じテナントの服屋でもアクセサリー屋でも、気のすむまま寄り道をしながらウォーミングアップをして、満足したら目的の店に向かいます。

 

そこには、機能比較を終えた夫が待っており、いくつかの特性を踏まえて、「値段ならAかB、機能ならCかD、話題性ではEもOKかな」などと整理をし、あとは妻に任せます。

 

「う〜ん、これがカワイイんじゃない?」と決めたもので、理論的な根拠は薄いかもしれません。

 

でも、男性脳では全く気にも留めない部分(例えば、最近買った服やお気に入りのコーディネートに良く合う、等)も無意識的に考慮して、ベターなものを選んでくれるものです。

 

できた妻だと、その上で2択にして、最後は夫に決定権を委ねてくれる人もいるかもしれません。

 

いずれにせよ、お互いの特性を分かった上で、無理に一緒に行動しすぎない工夫も、場面によっては良いことがあると思います。